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バイクのドライブチェーン点検・清掃・給油・調整|やってはいけないメンテナンスも解説

停車中のバイクのドライブチェーンにチェーンルブを塗布する様子

バイクの横を見ると、ものすごく分かりやすい場所で働いているドライブチェーン。

エンジンの力を後輪まで運ぶという、かなり重要な仕事をしています。

しかも雨に濡れる。

砂を浴びる。

泥も飛んでくる。

それでも毎分かなりの勢いで回されています。

待遇としては、なかなか厳しい職場です。

だからチェーンは、ときどき見て、汚れていたら掃除して、油を差して、たるみを確認する必要があります。

難しい作業ではありません。

ただし、やり方を間違えると寿命を縮めたり、場合によってはかなり危険だったりします。

今回はドライブチェーンの日常的な点検から、清掃、給油、たるみの確認までをまとめます。

この記事の結論

まずは、状態を見る。汚れていたら洗う。適切なルブを差す。たるみを確認する。

01エンジンは停止

エンジンは停止。後輪は必要に応じて手で回します。

02適正値を確認

自分のバイクの取扱説明書を見る。

やり方を間違えると寿命を縮めたり、場合によってはかなり危険だったりします。

点検・清掃で大切なこと

エンジンは停止。後輪は必要に応じて手で回します。

まずチェーンを見てみよう

工具を出す前に、まず見るだけで分かることがあります。

チェーンを一周見ながら、

錆びていないか、カラカラに乾いていないか、泥や古いルブが大量に固まっていないか、動きの悪いコマがないか、シールが外れていないか。

このあたりを確認します。

リアホイールを少しずつ手で回して、場所を変えながら見るのがポイントです。

チェーンは一周全部が同じように傷むとは限りません。

「ここは普通なのに、少し回したら妙に張っている」

ということもあります。

チェーンの「たるみ」も確認する

次にチェーンの中央付近を上下に動かして、たるみ量を確認します。

ここで大事なのが、

「チェーンはこれくらいたるんでいればOK」という万能の数字はない

ということです。

車種によって25〜35mmだったり、40〜45mmだったり、もっと大きく取る車種もあります。

つまり、

自分のバイクの取扱説明書を見る。

これが正解です。

また、測定するときの車体の状態も車種によって違うことがあります。

サイドスタンドなのか、車体を垂直にするのか、後輪を浮かせるのか。

この条件まで含めて取扱説明書に従います。

「前のバイクは30mmだったから、今のバイクも30mm」

はやめておきましょう。

人間のズボンのサイズと同じで、前に合った数字が今回も合うとは限りません。

張りすぎてもダメ、緩すぎてもダメ

チェーンを見ると、

「緩んでるなら、とりあえずピンピンに張ればいいんじゃない?」

と思いたくなります。

ダメです。

チェーンを張りすぎると、チェーンや周辺部品に余計な負担がかかります。

逆に緩すぎれば、大きく暴れたり、スプロケットから外れたりする危険があります。

チェーンは、

張れば張るほどシャキッとして偉い

という部品ではありません。

適正値が一番です。

チェーンメンテナンスで一番大事な注意

ここは先に書いておきます。

エンジンをかけたままチェーン掃除は絶対にしない

リアスタンドに乗せて、

「エンジンかけて1速に入れれば、勝手にチェーンが回るから掃除が楽じゃん」

これはやってはいけません。

エンジンは停止。後輪は必要に応じて手で回します。

回転しているチェーンとスプロケットの間に指を挟めば、大けがにつながります。

確かに電動チェーンクリーナーみたいで楽そうです。

頑固な汚れは落としたい。

でも人間の指まで落としてしまうのはやりすぎです。

ここは絶対に横着しないところです。

チェーンを清掃する

汚れてきたら清掃します。

基本的には、

シールチェーン対応と明記されたチェーンクリーナー

を使えばいいです。

最近のロードバイクや中大型車ではシールチェーンが多いため、何を使っているか分からなければ、まずシールチェーン対応品を選ぶのが安全です。

クリーナーを吹き付け、柔らかいチェーンブラシやナイロンブラシなどで汚れを浮かせ、ウエスで拭き取ります。

軽い汚れなら、クリーナーを含ませたウエスで拭くだけでも十分です。

毎回、チェーンを新品の展示品みたいに磨き上げる必要はありません。

古いルブと砂が団子になっているような状態を落としてやれば十分です。

普通のパーツクリーナーで洗っていい?

ここはかなり重要です。

ホームセンターにある速乾パーツクリーナーを、

プシューーーーーッ

とチェーン全面に吹き付ける。

おすすめしません。

特にシールチェーンでは、一般的なパーツクリーナーやブレーキクリーナーなどがシールリングを傷めたり、内部のグリース保持に悪影響を与えたりする可能性があります。

なので、

「パーツクリーナーという名前なら全部ダメ」

というより、

シールチェーン対応と確認できない汎用品をわざわざ使わない

と覚えておくといいでしょう。

専用品があります。

そこをケチって、あとでチェーン交換で高くついたら意味がありません。

灯油で洗う方法は?

昔からよく聞く方法です。

「チェーン掃除なら灯油」

という情報は今でもネット上にかなり残っています。

ただし、現在のシールチェーンでは、チェーンメーカー各社は専用クリーナーの使用を基本的にすすめています。

灯油などの溶剤は、シール材や表面の油分に悪影響を与える可能性があります。

昔から使われてきた方法と、現在のチェーンメーカー推奨が必ずしも同じではないわけです。

モトシルではここは素直に、

今のシールチェーンなら専用クリーナーを使う

でいきます。

ワイヤーブラシも使わない

錆を見ると、

「鉄にはワイヤーブラシでしょう」

と工具箱に手が伸びます。

待ってください。

シールチェーンにはゴム製のシールリングがあります。

ワイヤーブラシでガシガシやると、そのシールを傷つける可能性があります。

使うなら柔らかいブラシ。

頑固な汚れを見つけても、チェーンに親の仇ほどの力を込めなくて大丈夫です。

サビが浮いてきているなら、少し話が変わる

そして、汚れではなくサビがしっかり浮いてきているチェーンは少し注意が必要です。

表面にうっすら出た程度なら、状態を確認しながら清掃・給油で様子を見られる場合もあります。

ただ、

長いあいだ油が切れていた。
赤サビが広範囲に出ている。
コマの動きが渋い。

となってくると、

「もっと頑張って磨けば復活する」

という話ではなくなってきます。

特にシールチェーンは、外から見えているプレートやローラーだけでなく、シールの内側にもグリースを保持して使っています。

外側が長期間カラカラだったチェーンなら、内部のピンやブッシュ周辺も少し心配です。

サビというのはチェーンからの、

「そろそろ磨くより、状態そのものを見てくれませんか」

というお知らせかもしれません。

外側だけピカピカにしても、中身まで若返るわけではありません。

ひどいサビや固着がある場合は、清掃より交換を考える段階に入っている可能性があります。

こちらは、実際に新品へ交換したドライブチェーンです。

リアスプロケットに掛かったドライブチェーンのプレートとローラーに広範囲の赤サビが出ている状態
交換前のチェーン。プレートやローラーに広範囲の赤サビが出ています。

1枚目の写真は、サビサビになった交換前のチェーンです。後輪を手で回すだけでも重く感じる状態でした。

「このまま使ったら切れてもおかしくないのでは」と感じるほどで、ここまで来ると、清掃して油を差せば大丈夫、という段階ではありません。

バイクのリアスプロケットに掛けた新品のチェーンと、トレーに下ろした赤サビのある古いチェーン
新品のチェーンへ交換している途中。下のトレーには、取り外した古いチェーンがあります。

2枚目は、新品のチェーンへ交換している最中の写真です。古いチェーンと見比べると、もう色からして全然違います。

チェーンの種類によっては、交換にカット・カシメ用などの専用工具が必要です。慣れていない場合は、交換作業はお店に頼んだ方が無難でしょう。

こうなる前に、定期的にメンテナンスしましょう。ドライブチェーンは、決して安い部品ではありません。交換で大きな出費になる前に、日頃の点検・清掃・給油で状態を見ておきたいところです。

高圧洗浄機を至近距離から当てない

これも気持ちは分かります。

泥だらけのチェーンに、

ズバーッ!

と高圧洗浄。

すごく落ちそうです。

実際、落ちます。

必要なものまで落としかねません。

シールチェーンでは、高圧の水を至近距離からシール部分に当てるのは避けた方が安全です。

洗車のついでに水がかかるのとは別の話です。

至近距離から高圧でシール部分を狙い撃ちするのはやめておきましょう。

洗ったら給油する

清掃したら、クリーナーをしっかり拭き取り、必要に応じて乾燥させてからチェーンルブを塗ります。

ルブはチェーンの内側から、

プレートとプレートの間、ローラー周辺などに行き渡るように塗布します。

ここで、

「いっぱいかけた方が長持ちするだろう」

と白いクリームパンみたいになるまで吹く必要はありません。

一周給油したら、余分なルブはウエスで拭き取ります。

必要なところに油膜が残っていれば十分です。

余ったルブは走れば飛びます。

ホイールがベタベタになるだけならまだしも、ブレーキやタイヤに油が付着するのは危険です。

「シールチェーンなら中にグリスが入ってるから給油不要」ではない

これは意外と勘違いされやすいところです。

シールチェーンは、ピンとブッシュ周辺のグリースをOリングやXリングなどで封じ込めています。

では、

「グリス入ってるならチェーンルブいらないじゃん」

となりそうですが、そうではありません。

外からの給油には、

シールを保護する、ローラー周辺を潤滑する、錆を防ぐ

という役割があります。

外からルブを吹くのは、内部グリースを補充するためだけではありません。

この辺は次の記事で、Oリング・Xリングの構造と一緒に詳しくやります。

5-56をチェーンルブ代わりにしていい?

工具箱を見る。

5-56がある。

チェーンがある。

吹きたくなります。

ただし、バイクのドライブチェーン用潤滑剤として5-56だけで済ませるのはおすすめできません。

バイクのチェーンは、自転車より高速・高荷重で動きます。

5-56は非常に便利な潤滑・防錆剤ですが、バイクチェーン専用ルブとは役割が違います。

なので、

チェーンの最終的な潤滑には専用のチェーンルブを使う。

ここは分けて考えた方がいいでしょう。

5-56は万能に見えますが、万能選手にも守備範囲があります。

どのくらいの頻度で掃除・給油する?

これもメーカーによって少し違います。

500km前後を目安としているメーカーもあれば、800km程度を目安としている場合もあります。

なので、

「絶対500kmでやらないとアウト」

ではありません。

走る場所、雨、泥、保管環境でも変わります。

モトシルとしては、

500〜1000kmくらいをひとつの目安にしつつ、雨・洗車・悪路の後は距離に関係なく確認。最終的には車両とチェーンメーカーの指定に従う。

これくらいの覚え方が実用的でしょう。

チェーン調整はどうする?

たるみが規定値から外れていたら調整します。

一般的にはリアアクスルを緩め、左右のチェーンアジャスターを動かして後輪位置を調整します。

ここで重要なのが、

左右を適当に動かさないこと。

後輪が斜めになるとチェーンラインも狂います。

左右を均等に調整し、ホイールアライメントを確認したうえで、アクスルナットをその車両の規定トルクで締め、最後にもう一度たるみを確認します。

ただし、ここから先は「見る・洗う・油を差す」より一段上の整備です。

車種ごとに構造、たるみ量、締付トルクが違います。

トルクレンチも必要になることがあります。

分からない場合は、無理に触らずバイク屋さんに任せても何も負けではありません。

チェーンが「伸びる」って、本当に鉄が伸びている?

ここも面白いところです。

よく、

「チェーンが伸びた」

と言います。

もちろん呼び方としてはそれでいいのですが、チェーン全体がゴムのようにビヨーンと伸びているわけではありません。

主な原因は、ピンやブッシュ周辺が摩耗して、各リンクのわずかな隙間が増えていくこと。

その小さな摩耗が100リンク以上積み重なって、チェーン全体では長くなったように見えます。

だから、

「伸びたなら一コマ切って短くすれば復活」

とはなりません。

摩耗した部品は摩耗したままです。

調整ではなく交換を考える状態もある

チェーンは何でも張り調整で治るわけではありません。

チェーンの一部だけが固まっている。

シールリングが切れたり無くなっている。

ローラーに割れや傷がある。

ピンが回っている。

調整範囲いっぱいでもたるみが取れない。

全体的に強く錆びている。

こうした状態なら交換を検討します。

新品のルブを吹けば、チェーンまで新品になるわけではありません。

消毒液では骨折は治らない。

そんな感じです。

チェーンメンテナンスで覚えておきたい「やらないこと」

最後に、これだけ覚えておけばかなり事故を避けられます。

エンジンをかけて後輪を回しながら掃除しない。
シールチェーンに適合不明のパーツクリーナーを使わない。
灯油・ガソリンでシールチェーンを洗わない。
ワイヤーブラシでゴシゴシしない。
高圧洗浄機をシール部分へ至近距離から当てない。
5-56だけでチェーン給油を終わらせない。
ルブを必要以上にベタベタにしない。
チェーンをパンパンに張らない。
緩みすぎたまま乗らない。

この辺を避けるだけでも、かなりまともなチェーンメンテナンスになります。

チェーンは「難しい整備」の入口ではなく「自分で見る整備」の入口

ドライブチェーンは、バイクの中でも自分で状態を確認しやすい部品です。

エンジン内部のように開ける必要もありません。

見える。

触れる。

汚れているのも分かる。

油切れも分かる。

たるみも測れる。

だからバイクを自分で触り始めるなら、とてもいい場所だと思います。

まずは、

状態を見る。
汚れていたら洗う。
適切なルブを差す。
たるみを確認する。

ここまでできれば十分です。

そして次は、

「シールチェーンって何?Oリング・Xリングは何をしている?」

ここを知ると、

なぜパーツクリーナーがダメなのか。

なぜ外から給油するのか。

なぜチェーンによって値段が全然違うのか。

今まで何となくやっていたチェーンメンテナンスの意味が、かなり見えてきます。

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