MA2は高級オイル?MBは安物?純正オイルの値段を調べたら、予想外の結果に!

バイクのエンジンと、作業台に置いたオイル容器・琥珀色のオイルを描いたイメージ

目次

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前回の「JASO MA・MA1・MA2・MBの違い」では、エンジンの摩擦は減らしたいけれど、湿式クラッチには動力を伝えるための摩擦が必要、という少しややこしい話を整理しました。MA・MA1・MA2・MBは、その摩擦特性に関係する分類です。

そして最後に残ったのが、値段の話。「MA2は高級そう。MAは普通。MBは安そう」。オイル缶の表示だけを眺めていると、なんとなくそんな順番に見えませんか?

そこで今回は、ホンダ・ヤマハ・カワサキ・スズキの純正オイルを、規格・油種・粘度・価格で並べてみました。すると、ホンダの最上級オイルはMA。スズキではMA2とMBが同じ値段。思っていた序列が、値札を見た途端に崩れ始めました。

POINT:JASOの分類と値段を、別々に見る。比較するのは国内向けの代表的な4サイクル用純正オイル。価格は2026年10月11日確認時点の税込1L価格です。通販の実売価格や送料、交換工賃は含めません。

この記事の結論

MA2だから高級、MBだから安物、という見方は成立しません。同じ分類にも価格の違う商品があり、違う分類でも同額の商品があります。

014,400円でもMA

ホンダのRACINGは、化学合成油のMA。

02同じMA2で約1.95倍

ヤマハは10W-40同士でも2,420円と4,730円。

03MA2とMBが同額

スズキのR5000は、どちらも1,870円。

この比較は価格と表示の確認です。性能試験やメーカー同士の品質ランキングではありません。使うオイルは車両の指定から選びます。

前回のおさらい|MA・MA2・MBは高級品ランキングではない

詳しい仕組みは前回の記事に譲り、今回必要なところだけ振り返ります。JASO規格のMA・MA1・MA2・MBは、クラッチの摩擦特性による分類です。

MA・MA1・MA2・MBの位置づけ
分類今回押さえておく違い
MA湿式クラッチ向けの摩擦特性を持つ範囲
MA1MAの中で、比較的低摩擦側の範囲
MA2MAの中で、比較的高摩擦側の範囲
MBMA系より低摩擦側の分類

MAは「MA2になる前の古い下位規格」という意味でもありません。前回説明したとおり、MAの範囲に収まる摩擦指標の組み合わせや表示の選択によって、MAと表示される製品もあります。

つい考えたくなる順番

MA2 > MA > MB

数字や文字を、値段・品質の順位に読み替えてしまう。

実際に分けて見るもの

摩擦特性と商品設計

JASOの分類、ベースオイル、粘度、価格は別の軸。組み合わせて適合を確認する。

MA2の「2」は高性能の証明書ではありませんし、MBの「B」はバーゲン品のBでもありません。では、値札で確かめてみましょう。

ホンダ|最上級のRACINGがMAだった

まずはホンダのPro Honda。最上級に位置づけられるRACINGを含め、現在のラインアップを並べるとこうなります。

ホンダ Pro Honda|メーカー希望小売価格
商品JASO油種粘度1L価格(税込)
STANDARDMA部分合成油5W-302,090円
SCOOTERMB部分合成油5W-302,090円
SPORTSMA部分合成油10W-402,530円
PREMIUM SPORTSMA化学合成油(100%)10W-303,300円
RACINGMA化学合成油(100%)0W-304,400円

RACINGはMAで、1L 4,400円。MA2の表示がなくても、ホンダの最上級オイルです。「MA2の方が高級」という説は、ホンダの時点で早くも苦しくなりました。

一方、STANDARDとSCOOTERは、どちらも部分合成油・5W-30で2,090円。MAとMBの違いはあっても、値段は同じです。MAの中にも2,090円から4,400円までの商品があります。

なお、RACINGは0W-30、PREMIUM SPORTSは10W-30です。高い商品ほど自分のバイクに適している、とは限りません。表の価格順と、車両への適合は分けて見てください。出典:Honda Pro Honda公式ラインアップ。

ヤマハ|同じMA2・10W-40でも約2倍の価格差

ヤマハのヤマルーブでは、MA2の中だけでもはっきり価格差が出ます。

ヤマハ ヤマルーブ|ワイズギア公式掲載価格
商品JASO油種粘度1L価格(税込)
スタンダードプラスMA2鉱物油10W-402,420円
スポーツMA2部分合成油10W-403,080円
ブルー ForスクーターMB部分合成油10W-403,080円
プレミアムシンセティックMA2化学合成油10W-403,740円
RS4GPMA2化学合成油10W-404,730円

スタンダードプラスとRS4GPは、どちらもMA2・10W-40。それでも2,420円と4,730円で、差額は2,310円。RS4GPは約1.95倍、ほぼ2倍です。

同じMA2でも、鉱物油・部分合成油・化学合成油があります。規格と粘度が同じだからといって、商品設計まで同じになるわけではありません。MA2の「2」に、値段を2倍にする魔法はないようです。

さらに、スポーツはMA2、ブルー ForスクーターはMBですが、どちらも部分合成油・10W-40で3,080円。MBが安物という見方も、ここでまた値札に引っかかります。出典:ワイズギア ヤマルーブ公式ラインアップ。

カワサキ|50番より40番が220円高い!

カワサキでは、JASOとは別の数字にも面白い結果がありました。ここでは次の4製品を取り上げます。

カワサキ純正オイル|公式オンラインショップ掲載価格
商品JASO油種粘度1L価格(税込)
R4MA部分合成油10W-403,190円
Semi-Synthetic Oil by MOTULMA2部分合成油10W-403,300円
elf Vent Vert 冴強MA2全化学合成油10W-503,520円
elf Vent Vert 冴速MA2全化学合成油10W-403,740円

10W-50の冴強より、10W-40の冴速の方が220円高い。どちらもMA2・全化学合成油ですが、高温側の粘度の数字と値段は、大きい順に並びません。

公式資料では、冴強は高温側を50番にして保護を重視した設計、冴速は粘性抵抗を減らしてエンジンの反応を重視した設計と説明されています。狙いの違う商品であり、40番が50番より上位という意味ではありません。

POINT:粘度の数字にも、高級品ランキングはない。SAE粘度グレードの40・50は粘度の分類です。今回の価格差から「40番の方が高性能」「50番なら安く済む」とは判断できません。

カワサキには、この表以外にPremium Oil by MOTULもあります。表全体をメーカーの最高価格順と受け取らないようにしてください。価格は調査時点の公式ショップ、油種・設計は公式2026年カタログを参照しています。

スズキ|MA2もMBも、同じ条件で1,870円

最後はスズキのECSTAR。今回、条件を揃えて見ると一番分かりやすいのが、このR5000の2製品です。

スズキ ECSTAR|メーカー希望小売価格
商品JASO油種粘度1L価格(税込)
R5000MA2鉱物油10W-401,870円
R5000 スクーターMB鉱物油10W-401,870円
R7000MA2部分合成油10W-402,530円
R9000MA2全合成油10W-402,860円

R5000とR5000 スクーターは、同じメーカー・同じ鉱物油・同じ10W-40・同じ1Lで、どちらも1,870円。規格の欄はMA2とMBですが、値札は完全一致しています。

「MA2が高級でMBは安物」という理論には、なかなか厳しい比較です。規格の文字だけで値段を当てようとしても、スズキの値札が答え合わせを許してくれません。

注意:同じ値段でも、同じ中身・同じ使い道とは限らない。鉱物油や粘度が一致していても、添加剤の配合などまで同一と確認したわけではありません。MA系指定の車両へ、同額だからという理由でMBを選ばないでください。

R5000・R7000・R9000を見れば、同じMA2の中に鉱物油・部分合成油・全合成油があることも分かります。JASOの分類とベースオイルの種類は、そもそも別の話なのです。出典:スズキ ECSTAR公式ラインアップ。

では、オイルの値段は何で決まる?

一般に、オイルの価格にはベースオイルや添加剤、耐熱性・せん断安定性などを狙った設計、製造・販売コスト、ブランドの位置づけなどが関係します。同じMA2でも、中身まで同じとは限りません。

ただし、今回調べた公式ページだけでは、各商品の原価や「何にいくら掛かっているか」までは分かりません。冴速が220円高い理由や、R5000の2製品が同額に設定された理由を、配合から断定することもできません。

この比較から確認できるのは、MA・MA2・MBの分類だけでは、価格も商品全体の性能も決まらないということです。JASO T 903にはエンジン油性能などの要求もありますが、MA・MA1・MA2・MBの区分は摩擦特性によるもの。価格表や品質ランキングではありません。

また、今回調べた代表製品ではMA1単独表示の商品は見つかりませんでした。MA1も正式な分類ですが、比較する現行商品を確認できていないため、無理に値段の欄を埋めることはしません。

値札を見る前に、自分のバイクの指定を確認する

値段を見比べるのは面白いですが、実際に買うときは順番が大切です。

  1. STEP 1
    車両の指定を確認する

    取扱説明書で、年式・車種に合うJASOの分類、粘度、API規格などを確認する。

  2. STEP 2
    指定を満たす商品に絞る

    「高いから」「MA2だから」「スクーターだからMB」と決めず、缶と公式資料の表示を照合する。

  3. STEP 3
    適合する中から価格を比較する

    用途やメーカーの説明を読み、容量・送料も揃えて購入候補を比べる。

たとえばヤマルーブのブルー Forスクーターは、公式ページに湿式クラッチを採用するTMAXには使えないという注意があります。「スクーター用」という商品名だけでも、適合は決められません。ブルー Forスクーターの公式注意事項も確認してください。

規格の読み方で迷ったら、前回のJASO規格の記事へ戻ってみてください。今回は値札、前回は仕組み。両方を見ると、缶の表示を読み違えにくくなります。

まとめ|オイル缶の数字は、戦闘力ではない

ホンダの最上級RACINGはMA。ヤマハは同じMA2・10W-40でも約2倍の価格差。カワサキでは50番より40番が高い例があり、スズキでは同じ条件のMA2とMBが同額でした。

つまり、MA2だから高級、MBだから安物という話は成立しません。値段が違う理由は商品ごとにあっても、その理由をJASOの文字や数字だけで説明することはできないのです。

MA2の「2」は高級品の証明書ではありませんし、MBの「B」はバーゲンのBではありません。値段や数字の大きさで選ぶ前に、まず自分のバイクの説明書を確認しましょう。

オイル缶に書いてある数字は、
戦闘力ではありません。
調査条件2026年10月11日確認。ホンダ・スズキはメーカー希望小売価格、ヤマハはワイズギア公式掲載価格、カワサキは公式オンラインショップ掲載価格を使用しました。税込・1L容器の商品価格で、送料・交換工賃を除きます。実売価格とは異なり、価格や仕様は変更される場合があります。油種は公式表示を基に、部分化学合成油を表内では部分合成油と表記しています。

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